危険な加湿器
大層危険だがどこか間抜けな犯罪であった。単なる加湿器を恐るべき凶器に変えた知識には畏怖もしようが、如何せんあの臭いでは、気づかれないとでも思ったのだろうか。
その事件は、慌ただしい年末の119番通報から始まった。駆けつけた救急隊員の言によると、室内には何とも云えない異臭が立ちこめ、被害者の女性は激しく咳き込み、息も絶え絶えの様子であり、緊急入院とあいなった。
診察した医者の話では、どうやら塩素中毒との事であり、当初は近年多発する塩素系漂白剤と酸性洗浄剤との併用・混合による事故と思われた。しかしながら「何故夜中に発生したのか」という疑問と「漂白剤や洗浄剤の類がいっさい見当たらない」という事実から、混合事故の可能性は薄れていった。
その後、一命を取り留めた被害者の証言や現場検証により、
1.食塩が全て無くなっている事(約1kg程喪失)
2.食酢が全て無くなっている事(約1.5L程の喪失)
3.加湿器を付けてから、しばらくして異臭を感じた事
4.加湿器の内には高濃度の食塩水と食酢との混合溶液が入っていた事
5.加湿器にはその他に、ビニール袋が残されていた事
6.異臭は加湿器から発生しており、酢と塩素との混合臭であった事
7.加湿器は舶来製の塩ひとつまみ入れると作動するタイプである事
が明らかになった。何故、加湿器から有毒ガスが発生したのだろうか。また何故、被害者は気づくのが送れたのだろうか。推理して欲しい。
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