失われる情報

 歴史は累々と重ねられ突き進んでいく。そこに乗る者はその意識もなく、ただ暮らし、ただ記録し、ただ消えていく。太古の情報は失われ、断片のみが細々と発掘される。文字の発明は多くの利点をもたらしたが、それさえも情報伝達の完全性を保証するものではない。

 科学技術の進歩は多大なる成果を勝ち取ってきた。神話・物語に託された数々の願い、恐れ。「光あれ」「イカロスの翼」「天変地異」「魑魅魍魎」・・・数々の想いを糧にし種にし、花開いた科学技術、しかし数世紀前の情報を完全には復元できず、ほんの数百年前、いや数十年前の情報さえも伝達不能としてしまった。

 これが科学技術の進歩なのか。破れし技術は隅に追いやられ、やがて消滅する。「新しき事は良いこと」、これが科学技術の持つ本性である。

 欠陥があることのを前提に、開発、提供、利用されるソフトウェア。それ故に修正プログラムが必須になる場合も少なくはない。人々の欲求、周辺技術の進歩、利潤追求、これ故に常に新しい素晴らしい物を提供せねばならない。それも限りなく素早くに、過去を気にするなど論外となる。

 進歩、進歩、進歩、どこまでも突き進め。壁があれば突き破れ、谷があれば埋め尽くせ、そこには果てることのない欲望こそが支えになろう。

 ふと足を止めたきみ。捨てられし技術は隅に追いやられ、消滅を待っている。間に合うのか・・。

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