朝三暮四

 シャル君が勤めている狙公社は毎年業績が悪く、それでも大過なく過ごせたのは公社ゆえなのです。しかし、近年国民の目が厳しく、不採算事業体の統廃合が進められ、更には独立法人化まで迫られていました。このままでは整理の対象になると考えたお偉いさんは、一般職員の給与の削減を提案しました。現行基本棒給に対して来期は30%、業績回復が見込まれる来々期は40%にするという大幅なものであり、とうてい受け入れられるものではありません。

 しかし、お偉いさんは目に唾して訴えます。このまま独立法人化され、市場に放り出されたらたら、どうなるのか。政府の保証が亡くなったらどうなるのか。特別なスキルなしに一からやり直せるのか・・・。さながら涙目で訴えます。この熱弁に一般職員達にも仕方がないかという雰囲気が芽生えますが、いきなりの30%では不安です。たとえ手厚い手当やらは存続しててもです。

 そこでお偉いさんは一計を案じます。いきなりの衝撃を和らげるため、来期は40%にする代わりに、来々期は30%にするというものです。当然、業績が回復し回避できたら、特別給を約束してです。

 一般職員は考えます。このまま民営化されて破綻するよりも、減給を受け入れて(と言っても年収ベースで比較すると・・・)、今は堪え忍びるも将来の回復に賭けようと、その期待だけを拠り所に減給処置を受け入れました。

 人件費削減に一定の成果を見たお偉いさん、減給するも当面の衝撃を和らげた一般職員、債務の間接的肩代わりの負担が軽くなる国民、一体誰が得をするのでしょう。

 不景気は続き、税収は落ち込み、優良企業も苦しい昨今、小手先の回避策しかできなかった狙公社が来期末に整理されるのは当然の報いであったのでしょう。次の寄生先を模索するお偉いさん、取りあえず40%は確保した一般職員、債務超過になるか否やを心配する国民、一体誰が損をするのでしょう。

 業績を立て直せなかったお偉いさん、職を失った一般職員、不良債権化した狙公社を間接負担する国民、一番損をしたの誰でしょう。得をしたのは誰でしょう。あの時、30%を押し通せれば、受け入れていれば、今となっては詮無いことなのです。

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